1. なぜ不安になるのか:不安のメカニズム

なぜ不安になるのか:不安のメカニズム

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このコラムでは、

不安とは何か、

不安がどのように起きてきて、
どのように鎮まっていくのか、

不安のメカニズムについてお伝えします。

①不安が存在する意味

不安は不快な感情ですが、
不必要な感情ではありません。

不安があることで、
私たちは、
未来の危険から身を守ることができます。

例えば、
「災害が起こるのではないか」
という不安があるとします。

この不安があることで、
災害が起きた時のために、
避難場所を確認したり、
災害用品を備えたりすることが出来ます。

もし、
「災害が起こるのではないか」
という不安がなければ、
そういった災害の備えをすることはなく
実際に災害が起きた時に、
危険なことになってしまう可能性が高まります。

不安とは、
未来の危険から身を守る、
役に立つ感情の1つなのです。

不安があることで、人間は危険に備え安全を確保することができる。

②不安が生まれる仕組み

同じような出来事に出会っても
それを不安に思う人もいれば、
不安に思わない人もいます。

出来事は同じでも、
そこから感じる不安は異なる
ということは、

出来事そのものが、
不安を引き起こしている訳ではありません。

×出来事→不安

出来事そのものではなく、
出来事に対する
「考え方」(思考)
によって不安は生じます

◎出来事→考え方→不安

例えば、
「地震」という出来事に対して
【死んでしまうのではないか】
と考えると、不安が高まります。

一方で、
「地震」という出来事に対して
【備えているから大丈夫】
と考えると、不安は高まりません。

同じ「地震」という出来事でも、
考え方が違うと、
そこから感じる不安も変わってくるのです。

パターン1:
地震→【死ぬのでは】→不安

パターン2:
地震→【大丈夫】→安心

不安は、思考(考え方)によって生まれる。

③不安に適応する

同じ不安に晒され続けると、
良くも悪くも、
人はその不安に適応します。

例えば、
「地震で死んでしまうのではないか」
という不安を持っていても、

その不安を
ずっと同じレベルで感じ続けることは難しく

どこかで
「そうはいっても今は〇〇をするか」
などと当面のことに意識を向けて、

不安を無意識的に脇に置いたり、
意図的に不安に踏ん切りをつけたりして、

不安がありながらも、
生活をこなすようになっていきます。

 

人間は適応能力の高い生き物です。

寒い地域では、寒い気候に適応し、
暑い地域では、暑い気候に適応し、

海の近くでは、海の生活に適応し、
山の近くでは、山の生活に適応し、

そうやって、
環境に適応して
生き延びてきました。

同じように、
不安のある環境では、
その不安がありながらも
生活ができるように
心を適応させて生きていくことができます。

これは、
不安が無くなるということではありません。

不安がありながらも、
生きていく術を身につけられるということです。

人間は不安に適応できる(ただし、不安がなくなるということではない)

④不安にとらわれる要因

不安を感じるということは、
誰にとっても自然なことです。

むしろ、
不安を感じることよりも、
不安にとらわれ続けていることの方が重要です。

多くの方は、
不安がなぜ生まれるのか
不安の原因を気にしますが
多くの不安の原因は
ごく自然でありふれたものなので、
わかったところで、
どうしようもない場合が少なくありません。

例えば、
「地震が不安であること」の原因は
「将来の地震の可能性」ですが、
日本に住んでいる限り
地震の可能性がゼロになることは
ありえないでしょう。

 

ここで視点を変えて、
不安の原因ではなく、
不安にとらわれ続けている要因
に目を向けてみるとどうでしょう。

例えば、
地震が不安で
エレベーターに乗れない人がいるとします。

『エレベーターの中で地震が起きたら、
閉じ込められてしまうのではないか』
と不安でエレベーターに乗れずにいます。

通常、どんなに不安な状況でも、
その状況にさらされ続けると
自然とその不安に適応して
不安がありながらも
生活ができるようになります。

実際はエレベーターが止まることは稀ですし
もし止まったとしてもすぐに復旧しますから
エレベーターに乗り続ければ
「乗ったけど、大丈夫だった」
という経験を繰り返し、
不安がありながらも
エレベーターに乗ることが
苦痛ではなくなってきます。

一方で、
エレベーターに乗ることを避けていると
どうでしょう?

「乗ったけど、大丈夫だった」
という経験をするチャンスがなくなり、
エレベーターを気にするたびに
地震の不安にとらわれ続けます。

この場合、
地震の不安にとらわれ続けている要因は、
「エレベーターを避ける行動」
ということになります。

不安に対処するために
エレベーターを避けているはずが、
それによって逆に、
不安にとらわれ続けているのです。

臨床心理学では、
このような要因を
「不安の持続要因」
と言います。

不安の原因を変えることは困難でも、
不安にとらわれる要因を変えることは
可能である場合が少なくありません。

逆に言えば、
不安の原因が変わらなくても
不安の持続要因さえ変われば、
自然と不安に適応することができる
とも言えます。

不安の原因よりも、不安にとらわれる要因が重要


執筆:臨床心理士 髙橋雄太
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