1. カウンセラーはどこまで秘密を守るのか?例外は?

カウンセラーはどこまで秘密を守るのか?例外は?

qimono / Pixabay

こんにちは。
臨床心理士の髙橋です。

このコラムでは、
「カウンセラーはどこまで秘密を守るのか」
ということについてお伝えします。

 

ここで言う「カウンセラー」とは
臨床心理士や公認心理師など、

いわゆる「心の悩み」について
相談できる心の専門家のこと。

 

カウンセラーにとって
「相談されたことを秘密にする」
ということは
ごく当たり前のことですが、

多くの人にとっては
カウンセラーがどこまで秘密を守るのか
あまり馴染みのないことかもしれません。

 

カウンセラーに相談する人が
安心して相談できるように

カウンセラーと秘密の関係について
具体的に書いていきたいと思います。

 

 

この記事は、
一般向けに書かれたものですが、

カウンセラーを目指している人や
カウンセラーと一緒に仕事をされている人
にも役に立つようにと思って書いています。

 

少し長めのコラムになりますが
もしよろしければ
お付き合いくださいね。

 

また、疑問点などあれば、
ツイッターか、
リクエストフォームより、
ご遠慮無くご意見ください。

秘密があるということ

「人には知られたくない秘密」
誰にでもありますよね。

私もいっぱいあります。

気まずいことや、
恥ずかしいこと、
自分でも認めたくないと
…などなど、

大なり小なり
誰にでも、
秘密にしておきたいことは
あるものだと思います。

 

秘密があるというこは、
何も悪いことではありません。

人は
「見せたいところを見せ」
「隠したいところを隠す」
ことで「自分」を表現する
生き物です。

 

秘密について言えば
人は誰でも
「隠したいことを秘密にする権利」
を持っていると、
私は考えています。

 

秘密は秘密のままで、
人生を過ごせるのなら
それは素晴らしいことです。

秘密と相談

秘密は秘密のままで
永遠にだれにも知られずに
過ごすことができるのであれば
それがベストです。

 

ですが、
長い人生の中では、
自分だけの力では
どうしても解決できないこと
が起きることがあります。

一人で解決できないことは
相談をする必要があります。

 

けれども、
「相談する」ということは
「秘密を明かす」ということと
ほとんど同じこと。

「相談」というものは、
そういったジレンマを抱えながら
されるものなのです。

カウンセラーの社会的役割

信頼している家族や友人にすら
打ち明けられない秘密
というものはあります。

 

むしろ
信頼している人だからこそ、
「関係を壊したくないから」
「心配をかけたくないから」
打ち明けられないこともあります。

 

そんなときに、
誰にも相談できずに
抱えてしまわないよう

職業として
「秘密を守ること」
を義務付けられている
プロのカウンセラー
がいるのです。

カウンセラーの守秘義務

秘密を守ることは
「カウンセラーの義務」として
明確に定められています。

これを「守秘義務」と呼びます。

 

心理職の国家資格である
「公認心理師」
を定める法律にも、
以下のように定められています。

公認心理師法 第41条
公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

公認心理師法 第46条
第41条の規定に違反したものは、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する。

引用:公認心理師法

カウンセラーはどこまで秘密を守るのか

『そうは言っても、
カウンセラーも人間なのだから
ついポロッと言っちゃうことも
あるんじゃないの…?』

…と、
もしかしたら思われるかもしれません。

 

ここから先は、
カウンセラーが具体的に
どこまで秘密を守っているのか
私自身を例にあげて
お伝えしていきます。

 

 

私は「臨床心理士」として
カウンセラーの仕事をして
10年になります。

この10年間は
臨床心理士の倫理規定
を元に守秘義務を守ってきましたし、

これからは、
それに加えて「公認心理師」として
秘密を守っていきます。

 

私が一番最初に
守秘義務に関する教育を受けたのは
カウンセリングについて専門的に学ぶ
臨床心理学の大学院の時です。

 

大学院入学当初に
怖そうな先生がずらっと並び
厳しい表情で、
以下のようなことを話されました。

①「カウンセリングの内容はもちろん、相談機関の中で得た情報は、一切、部外者に話してはいけない

②「たとえ親や恋人であっても、絶対に話してはならない

③「心理の仕事を辞めた後も、死ぬまで秘密を守り続けなければならない

④「部内者同士であっても、カフェや、屋外など、一般の人がいる場所で、話をしてはいけない

当時はまだ素人だった私も
「これは破ったらヤベーやつだ…」
と思うほど厳しい雰囲気だったのを
今でもよく覚えています。

 

 

今思えば、
この時にしっかりと釘を打ってもらえて
守秘義務の重要性を感じられて
本当に良かったと思います。

 

おかげさまで
カウンセラーとして働いたこの10年間
カウンセリングの内容は
妻にすら一切話したことはありません。

 

ですので、

「カウンセラーはどこまで秘密を守るか?」
と問われれば

「死ぬまで、全ての人に対して、秘密を守る」

と言うことが出来ます。

 

これは私だけではなくて
どのカウンセラーも
このくらいの覚悟で
カウンセリングをしていることが
一般的だと思います。

守秘義務の例外

上記のように
カウンセラーの守秘義務は
かなり徹底されています。

一般の人に
カウンセリングの情報が漏れる
ことは「あり得ない」
と言っても良いでしょう

 

 

ただし、
専門家同士で
情報を共有することは
実はよくあることです。

 

 

ここから先はこういった
「守秘義務の例外」
について話していきたいと思います。

 

法律上は、
「正当な理由がなく
…秘密をもらしてはならない」
とされていますが、

以下の例外はこの
「正当な理由」
に当たると考えるということです。

例外①:自傷他害の恐れがある場合

「これから自殺しようと思っている」
「これから人を殺そうと思っている」

こういった事柄が
カウンセリングで語られた場合、

カウンセラーは
それが実行されないように
できる限りの対処をする
社会的責任がある
とされています。

 

そして、この社会的責任は、
守秘義務よりも優先されます。

 

具体的には、
上記のようなことが語られた場合、
相談者本人の許可がなくても
保護者や警察などに連絡をして
安全の確保に努めなければなりません。

 

こういった対応の根拠として、
以下の「タラソフ判決」と呼ばれる
海外の判決結果がよく参考に出されます。

「自己の患者が他者に暴力を及ぼすと重大な危険性を呈しているとセラピストが判断する場合,あるいは,セラピストが自分の職業規準に則ってそのように判断すべき場合,セラピストは,予定被害者をそのような危険から保護するために適切なケアをする義務を負う」(引用:ソーシャルワーカーの守秘義務と秘匿特権 に関する研究序説( 1) )

例外②:法律上の理由がある場合

法律によって情報を伝えることを
義務付けられている場合、

法律を遵守することが
守秘義務よりも優先されます。

 

これによく該当するのは
「虐待の通告義務」です。

(児童福祉法第25条、児童虐待の防止等に関する法律第6条)

カウンセリングの中で
虐待が疑われた場合
それを児童相談所等に
通告する義務があります。

例外③:専門性を検討する場合

カウンセリングは

「ただ話を聞く」
というものではなく

学術的に検証された
専門的な援助方法です。

 

一方で、
カウンセリングは
密室で、誰にも知られずに
行われる行為ですので、

それが正しく行われているか
カウンセラー自身が
チェックするしかりません。

 

日々行われている
カウンセリング行為が、
本当に専門的に妥当なものか?

それを自分だけで
チェックするには
限界があります。

 

心の相談とは
多様なものですから、

熟練のカウンセラーでさえ
一人で検討するだけでは

思い込みに左右されやすく
なってしまうのです。

 

そのためカウンセラーは
他のカウンセラーと
専門性の検討をします。

 

この検討のことを
「ケース検討」や
「スーパーヴィジョン」
と呼びます。

 

このような検討によって
カウンセリングの質は保たれて
より効果的なカウンセリングが
提供できるようになるのです。

 

 

このように
専門性を検討するために
他のカウンセラーと
情報を共有するということが
起こります。

ですが、
他のカウンセラーも当然
守秘義務をもっていますので
他のカウンセラーから
秘密が漏れることはありません。

 

このように
守秘義務を個人で持つのではなく
専門家集団全体で持つことを
「集団守秘義務」
と呼びます。

 

 

なお、
専門家同士で共有をする際も

名前や電話番号、住所など
検討に必要のない情報を
共有することは一切ありません。

 

あくまでも
必要な情報だけを
共有し合い、

共有した情報も
専門家以外に伝わることは
一切ありません。

例外④:他の専門職と連携をする場合

カウンセラーの仕事は
カウンセラーだけで
完結するものではありません。

安全で効果的な支援の為には
他の専門職と連携をすることが
どうしても必要になります。

例えば、
相談者が精神疾患を患っている場合。

カウンセラーだけが
単独で対応するよりも、

医師と連携をしながら
対応をした方が、

病状の的確な把握や、
治療方針の統一ができ、

より安全で効果的な
カウンセリングや治療を
提供することが可能になります。

具体的には、

病院では、
医師や看護師などと

学校では、
教師と連携をします。

ただし、
「連携」とは、

相談者さんの利益のために
行うものですので、

相談者さんの利益を無視して
行われることはありません。

 

例えば、
病院のカウンセリングで、
患者さんから、
「医者がちゃんと説明をしてくれない」
と相談された場合、

これをそのまま
カウンセラーから医師に
勝手に伝えるのでは、

それを知った患者さんが
気まずく思ってしまい
受診がしづらくなる…
などの不利益に
発展する可能性があります。

そのため実際には、

『〇〇について不安なので
詳しく説明を聞きたい、
とおっしゃっていた』

…と私の方から主治医に伝えても
よろしいでしょうか?

などと、
患者さん本人が許容できるよう
表現を少し変えた上で
伝える提案をしたりします。

連携というのは、
相談者さんのために
行うことですので、

相談者さん本人の意思を尊重して
どう伝えるかを確認をしながら
納得のいく形で進めていくことが
一般的です。

決して
プライベートな情報が
なんでも筒抜けになる
ということではありません。

まとめ

  1. 基本的には、カウンセラーに相談した内容は、どのような内容でも全て秘密として厳重に扱われて、一般社会に漏れることはない。
  2. 例外はいくつかあるが、いずれも守秘義務をもつ専門家や専門機関同士で、相談者の利益に配慮した形で情報の共有がなされる。

さて、
カウンセラーと秘密について
伝えてまいりましたが、
いかがでしたでしょうか?

疑問点やご意見などあれば
ツイッターか、
リクエストフォームより、
ご連絡くださいね。


執筆:公認心理師(臨床心理士) 髙橋雄太

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