知的障害の理解と対応

*当記事は、2018年に小学校で行った教員向け研修会の内容を、ネット向けに加筆・修正したものです。基本的には「通常級では対応に工夫が必要だけれども、支援級に行くほどではない」という、軽度の障害についてお伝えしています。

詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

発達障害と愛着障害の理解と対応:概要

 

知的障害の理解

知的障害とは、
知的能力が全般的に低い障害です。

例えば、

学年は小学1年生でも、
知的能力は3歳程度であり、
計算や書字がほとんど出来ない

などです。

知的能力は一つのものではなく、
さまざま能力の集合体です。

それが全体的に同じ程度低いので
知的能力のアンバランスさが
問題になることはありません。

 

 

行動上の特徴

行動上は、
年齢不相応の行動が
問題になることはありますが、
知的能力を基準に考えれば、
特殊な行動ではありません

例えば、
小学1年生の子どもが噛み付く、
ということは珍しい行動ですが、

3歳の子どもが
言葉をうまく使えずに噛み付く
ということは、珍しくありません。

「年齢は小学1年生でも
知的能力は3歳程度なので、
3歳にはよくある行動が起こる」

と理解することができます。

 

知的能力に合わせた対応を

知的障害の対応は、
その知的能力に合わせた対応
をすることが大切です。

実際の年齢が何歳であろうと、
知的能力が小学1年生と同じレベルであれば、
小学1年生にもわかるように説明し
そこから少しずつ成長できるように促します。

目標設定の考え方(スモールステップ)

知的障害を伴う子どもに教える場合
次の図のような考え方で
目標設定を行います。

A児・B児のような
知的障害を伴わない子どもの場合は、
各自の能力に左右されずに、
その年齢に応じた目標を
設定することが一般的です。

一方で、
知的障害を伴う子ども(C児)の場合は、
初めから年齢の目標を目指すのではなく
まずはC児の現在の能力にあった
達成しやすい目標(個人の目標)
を設定します。

そうすることでC児は
「これなら自分にも出来そう」
と、やる気をもって
目標に取り組みやすくなるのです。

そうやって小さな目標を達成しながら
最終的には大きな目標を目指すやり方を
「スモールステップ」
と呼びます。

 

 

身体の成長や周囲との関係にも配慮

身体の成長や周囲の友達の成長と
知的能力とが合わないことで、
問題が起こることもあります。

例えば、
・二次性徴の理解
・年齢に応じた遊びの理解
などが、年齢相応に出来ないために
問題が起こることがあります。

保護者や教師などの周囲の大人が
「この年代で、この知的能力であれば、
どのような問題が起きそうか…?」
「どう教えれば理解できるか…?」
という想像力を働かせてサポートをします。